ちょっといいもの-本好き?
『模倣犯』の感想

 すごいおもしろかった。上下2巻でかなりの長さにもかかわらず、全然あきなかったよ。

 今回はちょっと構成という点では強引さがあるかもって思う。まあ、それが物語なんだけど、でてくる登場人物がすべてつながってきちゃうのはちょっと・・・(その点ではレベル7のがレベルが高い)

 ただ、それを補って余るくらいの、犯人たちの心理描写。オリジナリティーの問題とか、英雄心理とかはほんと誰でもあてはまりうるなって。実際に犯罪をおかすかどうかは別としてだけどね。あと、ピースが由美子の元に現れ真犯人が別にいるって言うのがこの本の面白いとこなんだけど、それもありうるなって。彼の顕示欲なら、十分にね。

 最近犯罪とかも常識では理解できないものが多くなってきて、ピースみたいな見えない悪ってのも十分にありえるよね。表面上はまわりと協調してるのに、内心ではすごいことを考えてるっていうタイプ。心の見えない人ってのが一番怖いから。

 あともうひとつ感じたのが、ほんとに被害者の立場って考えられてないんだなあってこと。ワイドショーとかで被害者の気持ちも考えないような質問をしてるのをみると、ほんとマスコミって暴力なんだなって思う。どっかにそんなことに巻き込まれるのが悪いんだってい気持ちがあるんだろうなあ。あと、やっぱり犯罪者の家族を白い目で見ちゃうことってあるじゃない?これも難しいところだよね。

 何かに原因を押し付けないと不安だからね、人間って。しかもそれが真実かでっちあげかなんてあまり重要じゃないんだよね。とにかく自分には関係ないんだっていう風に思うためには。僕もそういう部分が多分にあるもん。気をつけなくっちゃ。

 ミステリーっていうと、誰が犯人なんだろうとか、どういうトリックなんだろうってほうに興味がいきがちだけど、宮部みゆきの作品には、それ以上に社会を感じるんだよね。だから単に面白いだけじゃなくって、いろいろ考えさせられる。これからもそういう作品をどんどん作ってほしいな。